秋の京都にもたらされた祭り。それは二冠馬不在の中、決して主役ではない菊の舞台を制した一頭の名馬の偉大な第一歩の証だった。
キタサンブラックについて
キタサンブラックは、第76回菊花賞馬であり、その後G1を6勝、通算G17勝を記録しました。
また、馬主は演歌歌手で有名な北島三郎さんです。
同期に、ドゥラメンテやリアルスティール、タンタアレグリア、シュヴァルグラン、サトノクラウンなどがいます。
(シュヴァルグラン、ドゥラメンテ、サトノクラウンはウマ娘にもいますね。アニメでドゥラメンテが登場したときは、本当におどろきました・・・)
二冠馬ドゥラメンテ
キタサンブラックのクラシック(3歳時のみ走ることのできるG1レース。皐月賞、日本ダービー、菊花賞)の戦績を語るうえで最も衝撃的な同期は、なんといってもドゥラメンテでしょう!
デビュー戦を2着で落とすものの次走の未勝利戦、セントポーリア賞を連勝。G3共同通信杯はリアルスティールの2着に終わりますが、クラシック第一冠、皐月賞に臨みます。
このレースはドゥラメンテの代表レースとして有名ですね。圧倒的なパフォーマンスで皐月賞を獲ったドゥラメンテは、世代の頂点を決める日本ダービーに乗り込みます。2着に1馬身以上離す快勝を飾り、見事二冠馬となります。オルフェーヴル以来、4年ぶりの三冠馬の誕生を期待させます。
振るわない春のクラシック戦績
キタサンブラックは、デビュー戦、3歳以上1勝クラス、G2スプリングSと3連勝し、皐月賞の切符を手に入れました。
皐月賞では、ドゥラメンテに次ぐ4番人気。レースでは2番手につけて最終直線で抜け出しを図りますがドゥラメンテ、リアルスティールの末脚に屈し3着。日本ダービーに駒を進めます。
日本ダービーでもスタートから2番手につけますが、他馬にからまれます。直線では伸びを欠き14着に沈んでしまいます。
再起をかけて、秋のG2セントライト記念を目指します。
ドゥラメンテの怪我
6月末、衝撃のニュースが報じられます。「ドゥラメンテ骨折。年内の出走は絶望的。」
フランスの大レース、凱旋門賞出走の話も出ていた中、ドゥラメンテは年内の休養を余儀なくされました。
そして、二冠馬の不在で色めきだったのはクラシックの最終戦、菊花賞のタイトルを狙うキタサンブラックとそのライバルたちでした。
成長を感じさせる秋の初戦
キタサンブラックの秋初戦は、菊花賞のステップアップレースに位置付けられているG2セントライト記念。日本ダービー2着のサトノラーゼンも出走してきました。
キタサンブラックは、春のクラシックと同じように2番手につけます。対するサトノラーゼンは、中団後ろにつけます。最終直線、サトノラーゼンは進路取りに手間取り、追い出しが遅れます。4コーナーで先頭に並んだキタサンブラックは、そのまま抜け出しを図り、2着に3/4馬身をつけて勝利します。
春より12kgも体重を増やし、充実した馬体を備えて、大舞台に向かいます。
接戦を制し、祭りをとどろかせた淀の舞台
来る第76回菊花賞。春の二冠馬不在の中、1番人気は皐月賞2着、ダービー4着のリアルスティールを神戸新聞杯で下したリアファル。キタサンブラックは5番人気でした。
キタサンブラックは、今までのレースと違い5番手を追走。向こう正面で他の馬が早めに仕掛ける中、自分のペースを保ちました。リアファルは、2番手につけ、抜け出す機をうかがいます。
4コーナーを過ぎて最終直線でみんなが勝負をかける中、キタサンブラックは内に進路を見出します。抜け出しを図るリアファルを後ろからとらえますが、外からリアルスティールが強襲。しかし、リアルスティールをクビ差で抑え、キタサンブラックが悲願のG1制覇を果たしました。
ちなみに、このレースでキタサンブラックは上り3ハロン(ゴールまでの600m)最速を記録。キタサンブラックにとって初めてのことでした。馬主の北島三郎さんにとっても初めてのG1勝利でした。
このレースのインタビューにて、北島三郎さんは代表曲「祭り」を歌い上げ、ファンとともに勝利を喜びました。(ウマ娘キタサンブラックのG1勝利ポーズにも取り入れられていますね)
終わりに
キタサンブラックはクラシックの舞台では、決して主役ではありませんでした。(皐月賞4番人気、日本ダービー6番人気、菊花賞5番人気)
しかし、菊花賞を制し、引退までの期間でG17勝を記録します。これは当時、あのシンボリルドルフと並ぶG1最多勝利記録です。
JRAが出している『ヒーロー列伝』のキタサンブラックにはこう記されています。
「そして、みんなの愛馬となった。」
二冠馬の陰に埋もれていた馬は、菊の勝利を第一歩に時代の主役の階段を上り始めるのでした。
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