四度、彩りを変えた大輪の百合~リスグラシュー~

リスグラシューについて

 父は、国内で唯一ディープインパクトを破ったハーツクライ。

 母はフランスで5勝のリリサイド。

 馬主はキャロットファーム。

 管理するのは、ダービー馬ディープブリランテやドバイターフ勝ちのリアルスティールなどを管理した矢作芳人調教師。

レコードと見込まれた素質

 メイクデビューは新潟1600m。

 後にリバティアイランドが衝撃の上り3ハロン31.4秒を記録した舞台で、リスグラシューはデビューしました。

 好位から早めに抜け出したルートディレクトリを追い詰めましたがクビ差の2着。

 しかし、上り3ハロン33.0秒を記録し能力の高さを示しました。

 その後、2戦目の未勝利戦を当時の阪神1800mの2歳レコードで勝利。

 2歳重賞のアルテミスSに駒を進めます。

 レースは流れが遅いと踏んだ鞍上の武豊騎手が道中ポジションを上げる好騎乗もあり、2着フローレスマジックの追撃をふりきり1/2馬身で勝利。

 レース後、武豊騎手は「現時点でも素質にあふれているが、これから楽しみな馬です」と将来のリスグラシューに思いをはせました。

 しかし、素質が花開くのには時間がかかるのでした。

世代の直接対決

 アルテミスSで世代上位の実力を示したリスグラシュー。

 次走に2歳牝馬GⅠの阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神JF)を選択します。

 阪神JFでは、前走アイビーSで勝利したソウルスターリング、小倉2歳S1着、京王杯2歳S2着の実績を持つレーヌミノル、デイリー杯2歳S勝馬のジューヌエコールなど相応のメンバーがそろいます。

 リスグラシューはソウルスターリングに続く2番人気。ファンもその素質に期待を寄せました。

 レースはアリンナの逃げで進みます。

 リスグラシューは大外枠から出遅れて後方に位置取り。

 一方、ソウルスターリングは内枠から好位の3番手につけます。

 最終直線、大外に持ち出したリスグラシューは猛然と追い込みますが、レースをロスなく運んだソウルスターリングが1と1/4馬身をつけて勝利。

 追い込んだリスグラシューは2着の結果となりました。

 しかし、上リスグラシュー以外は内枠からロスなく好位を運んだ馬が上位を占めました。

 ただ1頭大外から追い込んだリスグラシューは、不利な状況ながら能力の高さを示したといえます。

 これで2歳世代での勝負は終わり、3歳世代の牝馬三冠路線に続きは持ち越されます。

見せつけられる力

 3歳の初戦としてリスグラシュー陣営が選んだのは阪神JFと同じ阪神1800mで行われるGⅡチューリップ賞。牝馬三冠の一冠目、桜花賞へと続くステップレースです。

 レース前から2強ムードが漂います。

 1番人気はデビュー以来の4連勝を狙う2歳女王ソウルスターリング。

 オッズは単勝1.5倍。

 2番人気は阪神JFからのリベンジを果たしたいリスグラシュー。

 オッズは単勝2.7倍。

 3番人気のミリッサの単勝オッズが11.0倍であることを考えると、ファンも世代代表をこの2頭に選んでいることが分かります。

 レースはワールドフォーラブの逃げで進みます。

 中団内目につけたリスグラシュー。

 対するソウルスターリングは好位からレースを運びます。

 4コーナーで外に持ち出したリスグラシュー。

 好位から抜け出しを図るソウルスターリング。

 後続の追撃も抑えきり2着に2馬身差をつけて完勝したソウルスターリング。2歳女王の力を見せつけます。

 一方、リスグラシューは、外を追い込んできたミスパンテールに差され3着。悔しさを残しつつも3歳牝馬GⅠの桜花賞に臨みます。

いざ桜舞台へ

 阪神1600mを舞台に行われる桜花賞。

 これまで、同舞台で2着、3着と安定した走りをしていたリスグラシューは3番人気に推されます。

 単勝オッズ1.4倍の断然1番人気に推されたのは、同舞台を2勝のソウルスターリング。

 2番人気には、未勝利戦から3連勝でクイーンCを制したアドマイヤミヤビが推されました。

 中団につけたリスグラシューは、4コーナーで勢いづけて外から差しに行きます。

 しかし、好位から抜け出したレーヌミノルに半馬身差届かずの2着。

 1番人気ソウルスターリングはリスグラシューに続く3着でした。

 近3走はおしい競馬が続きましたが、陣営は2000m以上の方が適性があると踏んで2冠目のオークスに臨みます。

結果を出したい樫の舞台

 東京2400mを舞台に行われるオークス。

 3歳牝馬にとっては未知の距離であり、距離の適性が大きく問われるレースとなります。

 リスグラシューにとっても同じですが、東京競馬場は2歳のアルテミスSで結果を残している舞台。

 2000m以上の適性があるという陣営の考えもあり、3番人気に推されます。

 1番人気はソウルスターリング。前走は、雨で湿った馬場が合わなかったと陣営は見ていました。

 近走の3戦は関西への輸送もありましたが、今回はホームともいえる東京。

 桜花賞3着からの巻き返しを狙います。

 2番人気は桜花賞で12着の大敗を喫したアドマイヤミヤビ。

 桜花賞での走りは馬場によるものと陣営は考えました。

 東京は2戦2勝の得意コース。ファンも適性を見込んで2番人気に推しました。

 桜花賞馬レーヌミノルはリスグラシューに続く4番人気。

 血統的には2400mは長いように見えますが、陣営は自信をもって臨みます。

 レースの前半はゆったりとしたペースで進みます。

 スタートで後手を踏んだリスグラシューは馬群の中、中団に位置付けます。

 ゆったりとしたペースとリスグラシューのペースがかみ合わず、道中折り合いを欠いたリスグラシュー。

 直線では、進路どりにスムーズさを欠いたこともあり、初の馬券外の5着という結果に。

 レース後、矢作調教師は「秋に向けてまたやり直します」と再起を誓います。

勝ち切れない3歳

 秋初戦に陣営が選んだのはローズS。向かうは牝馬三冠の最後の一冠、秋華賞です。

 ローズS3着、秋華賞は2着の結果に終わり、どうしても勝ち切れないリスグラシュー。

 古馬牝馬との初対決となるエリザベス女王杯では8着と古馬の壁を感じる結果となります。

 リスグラシューの3歳は、こうして幕を閉じます。

1度目の変化

 4歳のリスグラシューは2月の東京1600mの東京新聞杯、4月の阪神1600m阪神牝馬Sに臨みます。

 桜花賞以来の1600mに臨む陣営は、2つのレースをステップに春の牝馬GⅠヴィクトリアマイルに狙いを定めます。

 4歳初戦の東京新聞杯では、直線で馬群を割って出る強い競馬を見せ、久しぶりの勝利。

 東京1600mというアルテミスSと同じ舞台で相性のよさを見せました。

 続く阪神牝馬Sでは、昨年のオークス馬ソウルスターリングとの対決が実現します。

 1番人気に推されたリスグラシュー。しかし、レースはスローペースを味方につけた3連勝中のミスパンテールの逃げ切りで幕を閉じます。

 中団から馬群を割って出たリスグラシューは迫るも3着。

 ひさびさのレースとなったソウルスターリングは10着となります。

 リスグラシュー鞍上の武豊騎手は「去年よりもよくなっている」と馬の成長を見て取ります。

 事実、デビュー時よりも30kg近く馬体が成長しているリスグラシュー。

 いざ春のマイル女王決定戦、G1ヴィクトリアマイルに臨みます。

大きなチャンス

 ヴィクトリアマイルは群雄割拠の様相を呈します。

 1番人気は単勝オッズ4.3倍のリスグラシュー。

 東京マイルで重賞2勝の実績が評価されました。

 また、鞍上の武豊騎手が会見で、昨年と比べてよくなったことやG1制覇の大きなチャンスだと意気込みを語ったことも期待を膨らませました。

 2番人気は単勝オッズ5.0倍の前年の女王アドマイヤリード。

 3番人気は単勝オッズ5.3倍で同舞台の3歳G1NHKマイルC勝ちの実績があるアエロリット。

 4番人気は単勝オッズ7.9倍で5連勝でG1初制覇を狙うミスパンテール。

 4番人気まで10倍を切る混迷したオッズとなりました。

 レースはカワキタエンカの逃げで進みます。

 最終直線、外から追い込むリスグラシューでしたが、それよりも内から抜け出してきたジュールボレールにハナ差まで迫るも2着。

 またしても悲願のG1制覇とはなりませんでした。

 レース後、武豊騎手は「あそこまでいったら勝ちたかった」、矢作調教師は「状態が良く、きょうは負けないだろうと思っていたが…」と悔しさをにじませていました。

 春の最終戦としてマイルG1安田記念に臨みますが8着。

 成長を感じつつも口惜しい結果で、リスグラシューの春は終わります。

悲願のGⅠ制覇

 秋の始動戦は、GⅡアイルランド府中牝馬S。

 出走馬には、同期のオークス馬ソウルスターリングや重賞3勝ミスパンテール、ヴィクトリアマイル勝馬のジュールボレールやアドマイヤリードと錚々たるメンバーが並びます。

 その中で、1番人気に推されたのはディアドラ。

 リスグラシュー、ソウルスターリングと同期の秋華賞馬で、春には国際GⅠドバイターフで3着の実績があります。

 ディアドラに続く2番人気に推されたリスグラシューは、後方からレースを運びます。

 最終直線、残り100mを過ぎて先頭に立ちますが、外から飛んできたディアドラにゴール前で差されます。

 実績馬相手に2着と休み明けとしては悪くない結果でした。

 続く2戦目に、秋の女王決定戦エリザベス女王杯を選択します。

 レース前のインタビューで調教パートナーの宮内助手は、「食べたものが実になって成長を感じる」とこれまでよりもパワーアップしていることを語ります。

 鞍上には世界の名手”マジック・マン”ジョアン・モレイラを迎え、GⅠ獲りを目指します。

 レース前の単勝オッズは5頭が10倍を切る混迷の様相を呈します。

 1番人気は前年度女王、モズカッチャン。

 2番人気は紫苑S1着の実績をもつ3歳馬ノームコア。

 3番人気は7度目の挑戦で悲願のG1制覇を狙うリスグラシュー。

 4番人気は前走のG2京都大賞典2着のレッドジェノヴァ。

 5番人気は前走秋華賞3着のカンタービレ。

 そのほか、ミスパンテールやアドマイヤリードといったライバルたちがレースに臨みます。

 レースはクロコスミアの逃げで進みます。

 好スタートを決めたリスグラシューは馬群の中団につけます。

 レースは前につけた馬に有利な展開で進みます。

 直線、逃げ粘るクロコスミアをただ1頭、上り33.8秒の強烈な末脚で襲いかかったリスグラシューが悲願のG1制覇を達成しました。

 鞍上のモレイラ騎手は日本でGⅠ初制覇。

 またハーツクライ産駒の京都GⅠ初制覇、そしてリスグラシューにとって8度目の挑戦でようやくつかんだ栄光でした。

 そして、ここからリスグラシューはまだ見ぬ道をたどります。

いざ世界へ

 G1の勲章を得たリスグラシューは、2018年最終戦に香港国際競走のG1香港ヴァーズに臨みます。

 日本からはリスグラシューとエリザベス女王杯2着のクロコスミア。

 欧州からはフランスG1サンクルー大賞勝馬のヴァイドガイスト、アイルランドダービー馬ラトローブが襲来。

 地元香港の代表格として、GⅠ2勝馬パキスタンスターが迎え撃ちます。

 スタート後、いつも通り後方に位置付けたリスグラシュー。

 3コーナー過ぎで徐々にポジションを上げていったリスグラシューは4コーナーを大外から回って直線に臨みます。

 一旦は先頭に立ったリスグラシューでしたが、内から差し返してきた香港馬エグザルタントにクビ差で届かず2着でフィニッシュ。

 勝ちが見えていたレースぶりだっただけに悔しさの残る最終戦でしたが、輸送のたびに馬体重を減らしていた頼りないリスグラシューの姿はもうありませんでした。

年末にはJRA賞4歳以上牝馬にも選出されたリスグラシュー。春に備えます。

あと少し

 5歳春を迎えたリスグラシューは、始動戦にGⅡ金鯱賞から香港GⅠクイーンエリザベス2世カップ(以下QE2世C)を計画します。

 金鯱賞出走メンバーには、GⅠ朝日杯FS勝馬でダービー以来のレースとなるダノンプレミアム。

 皐月賞馬アルアイン。

 GⅠマイルCS勝ち馬のペルシアンナイト。

 エリザベス女王杯勝ちの実績があるモズカッチャンなど、リスグラシューを含めたGⅠ馬5頭が揃い踏みする注目レースとなりました。

 最も注目されたのはエアウィンザー。

 母に秋華賞馬エアメサイアをもつ良血馬は、前走のGⅢチャレンジカップを4連勝で重賞初制覇。

 本格化を迎えた5歳馬が並み居るGⅠ馬を差し置いて1番人気に推されました。

 スタートを立ち遅れたリスグラシューは後方に位置取り、直線では先に抜け出したダノンプレミアムを猛追。

 しかし、ダノンプレミアムを捉え切れず2着に終わります。

 予定通り、香港に向かうリスグラシュー。

 QE2世Cの出走メンバー、日本からはリスグラシュー、国内外のレースを数多く走る同期の秋華賞馬ディアドラ、前走GⅡ中山記念を勝ち重賞5勝の記録を得たウインブライトが挑みます。

 地元勢の筆頭は香港ヴァーズ、香港ゴールドカップとGⅠを2連勝するエグザルタント。

 また、GⅠ2勝馬タイムワープとパキスタンスター、GⅠ1勝馬のグロリアスフォーエバーなどが日本勢を迎え撃ちます。

 スタートを五分で出たリスグラシューは中団に構えます。

 最終直線、外から差しに行くリスグラシューでしたが内から抜け出たウインブライト、外から飛んできたエグザルタントに続く3着。

 海外で善戦するも、やはり勝ち切れないレースが続きます。

 しかし、リスグラシューに運命の出会いが訪れます。

ダミアン・レーン

 ダミアン・レーン騎手はオーストラリアを拠点にする騎手です。

 2019年に短期免許で日本に訪れ、4月27日に初騎乗しました。

 2日後の新潟大賞典では、メールドグラースで早速重賞初勝利を果たします。

 その後、ノームコアでのヴィクトリアマイル勝利で中央GⅠ初制覇など重賞を計5勝を記録します。

 短期免許の交付期間最終週の宝塚記念に出走するリスグラシューの鞍上を務めることになりました。

 そして、ここからラストランまでの3レースをリスグラシューとともにします。

初のグランプリ出走

 ファン投票によって出走馬が選ばれる上半期グランプリ、GⅠ宝塚記念。

 前年の三冠牝馬アーモンドアイを筆頭にダービー&天皇賞(秋)を勝ったレイデオロ、菊花賞馬キセキなど実力と人気を伴う馬が選ばれます。

 リスグラシューは9位に選ばれ、出走を表明します。

 出走馬には、レイデオロやキセキ、大阪杯勝馬スワーヴリチャード、皐月賞&大阪杯勝馬アルアイン、ダービー馬マカヒキなど牡馬の一線級が並びます。

 リスグラシューはただ1頭、史上4頭目の牝馬の宝塚記念制覇を目指します。

 レースは内枠のキセキの逃げから始まります。

 リスグラシューはこれまでの後方待機はせず、キセキの後ろ、2番手につけ様子を伺います。

 4コーナーを回った地点でキセキに並びかけるリスグラシュー。

 残り200mとなったところでキセキを競り落とし、そのまま3馬身をあけての勝利。

 決して状態のよい馬場ではないながら、歴代2位の勝ち時計を記録、2番手ながら上り3ハロンを最速で駆け抜ける完勝でした。

 牝馬としては4頭目となる宝塚記念勝利、矢作厩舎としてもグランプリ初出走、初勝利の快挙。

 ダミアン・レーン騎手にとっても短期免許機関最終週にGⅠ勝利という関係者の思いでとなる勝利でした。

 矢作調教師は後のインタビューでリスグラシューには4度変化があったと言います。

 4歳の春、4歳のエリザベス女王杯の前、宝塚記念の前、そして豪GⅠコックスプレートの前。

 リスグラシューは、前人未到の記録を打ち立てるために、はるか遠くのオーストラリアへ向かいます。

主催者の計らいと憧れ

 オーストラリアのムーニーバレー・レーシングクラブはこの年から宝塚記念勝ち馬にコックスプレートへの優先出走権を付与。

 さらに、宝塚記念、コックスプレート両方を勝利した場合、1着賞金に加え特別ボーナスの支給も行うことを発表しました。

 また、これまでの検疫の条件も特例で緩和することで、日本馬の出走が容易になるように取り計らいました。

 それによって、日本からは豪GⅠコーフィールドCには重賞3勝メールドグラース、コックスプレートにはリスグラシューとGⅡマイラーズC勝ち馬で豪GⅠクイーンエリザベスS2着の実績をもつクルーガーが豪州の大舞台に臨むことになります。

 一方、若かりし頃にオーストラリアで修業を積んだ矢作調教師にとっても、1982年に見たキングストンタウンのコックスプレート3連覇以来、「いつか自分の馬で勝ちたい」という思いをもっていた憧れのレースにいよいよ臨むこととなります。

オーストラリアで打ち立てた快挙

 コックスプレートの前週にはGⅠコーフィールドCが行われました。

 出走した日本調教馬はメールドグラース。

 鞍上にはダミアン・レーン騎手を迎え、日本調教馬としては2014年のアドマイヤラクティ以来となる快挙を成し遂げます。

 日本調教馬による2週連続勝利が期待されるGⅠコックスプレート。

 リスグラシューは宝塚記念でコンビを組んだレーン騎手と臨みます。

 出走馬には欧州の実力馬マジックワンド、地元のGⅠ馬キャステルヴェキオ、ミスティックジャーニー、ベリーエレガントなどが並びます。

 レースはマジックワンド、ブラックハートバードの逃げで流れます。

 中団に位置付けたリスグラシューは3コーナー手前で進出を図りますが周りよりもスピードに乗り切れず遅れたかのように見えました。

 最終直線173mのムーニーバレーのコースは内の前目に位置付けた圧倒的に馬が有利。

 大外に持ち出されたリスグラシューには万事休すかと思われました。

 しかし、リスグラシューは4コーナーで驚異的な加速を見せ、残り200m地点で先団に取り付き、残り100m地点で抜け出したキャステルヴェキオを突き放し勝利。

 とてつもないパフォーマンスで日本調教馬初の快挙を成し遂げます。

 また、矢作調教師、ダミアン・レーン騎手にとっても嬉しい初勝利となりました。

いざラストランへ

 この年、1頭の牝馬が注目を集めていました。

 前年、牝馬三冠を達成し、ジャパンカップでは2400mのワールドレコードを樹立したアーモンドアイです。

 春の国際GⅠドバイターフを1着、安田記念を3着、天皇賞(秋)を並み居る強豪を相手に1着。

 圧倒的な実力に人々は目が離せませんでした。

 暮れのグランプリ、有馬記念。

 ここをラストランに定めたリスグラシューは、春秋グランプリ制覇をかけてアーモンドアイと初対決に臨みます。

 一方、アーモンドアイは香港Cへの出走を予定していたものの熱発で取りやめに。

 調整過程に不安があるも、ファンは単勝オッズ1.5倍の圧倒的1番人気に推し上げます。

 続く2番人気にリスグラシュー。

 さらに、GⅠ3勝馬フィエールマン、GⅠ2勝馬サートゥルナーリアやワールドプレミア、レイデオロなどGⅠ馬が11頭出走する、まさにグランプリにふさわしいレースとなりました。

 また、春に短期免許期間を終えたダミアン・レーン騎手がリスグラシューの鞍上として参戦。

 JRAの計らいで有馬記念当日の1日だけ騎乗を許可する特例のサプライズもありました。

 そうして臨んだラストラン。

 レースはNHKマイル勝ち馬アエロリットの大逃げで進みます。

 中団内目でレースを進めるリスグラシュー。

 4コーナー手前で上位に進出し、直線では大外に持ち出し、サートゥルナーリア、フィエールマンをノーステッキでなで斬ります。

 2着に5馬身差を見せての圧勝劇でした。

 宝塚記念、有馬記念の同一年グランプリ制覇は2009年のドリームジャーニー以来10頭目。

 牝馬としては初の快挙でした。

終わりに

 リスグラシューのたどった道のり、いかがでしたでしょうか。

 4度の変化を経て歴史に名を残すような馬となったリスグラシュー。

 私は有馬記念のときのリスグラシューが最も完成されていたのではと思っています。

 豪GⅠ制覇と同一年GⅠ牝馬初の制覇という快挙。

 唯一無二の花を咲かせたリスグラシューからまた再び名馬が生まれることを心待ちにしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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